稲積水中鍾乳洞のはじまり

稲積水中鍾乳洞の始まりは、今からおよそ2億数千万年前。はるか大昔、恐竜が生きていた時代で、私たち人類が現れ、やがて長くて寒い氷河期に入ろうとしていたときでした。 ちょうどそのころ稲積水中鍾乳洞のもとになる形(洞窟)ができたと考えられています。 そしておよそ8万5千年前に起こった、熊本県の阿蘇山の大噴火によってこの鍾乳洞はすっかり水に埋もれてしまったのです。その後長い時間がたち、 江戸時代には鍾乳洞の存在だけは知られていましたが、誰も見ることはありませんでした。 そして発見されたのは、現代のこと。ある日白山川で遊んでいた子どもたちが水のなかに“穴”を見つけたのが、なんと鍾乳洞の入り口だったのです。1976 年には潜水探検隊のダイバーによる潜水調査が始まり、日本でも一番長い約1,000 メートルの水中鍾乳洞が確認されました。 今でも調査は続き、2014年2月に行った潜水調査では新たに約300メートルの鍾乳洞が発見されています。

洞窟の中に空洞ができるまで

かつて洞窟の中に流れていた川や石灰岩の割れ目に入った地下水が長い時間をかけてまわりの石灰岩を少しずつ溶かしながら穴を大きくしまるで人が削ったような大きな空間や変わった形の空間を作ることがあります。 稲積水中鍾乳洞の中でも見られるベルホールもそのひとつ。まるいお椀が壁をくりぬいたような、釣り鐘型のくぼみが天井に伸びていくベルホールは、かつて水に沈んだ鍾乳洞の中で激しく水流が渦巻き、石灰岩を溶かしていったことの証です。

鍾乳石

洞窟の中にいくつもあるつららのような鍾乳石。
鍾乳石は、二酸化炭素が溶けた酸性の雨水や地下水が石灰岩の地層をとおりながら石灰分(炭酸カルシウム)を溶かし出し、そのしずくが洞窟の中に現れると二酸化炭素が逃げて固まっていく石灰分の結晶です。したたり落ちる水の1滴1滴で形を作る鍾乳石が1cmに育つまでかかる時間は、およそ100年にもなります。

とてつもなく長い年月をかけて、稲積水中鍾乳洞が形成されたことがわかりますね。

   
   

フロースト―ン(流れ石)

鍾乳石には様々な種類があります。
壁にそって地下水が流れ落ちながら形を作った鍾乳石を「フローストーン(流れ石)」と呼びます。
表面がうっすら白いのは、まだ成長中のためです。地下水の中に含まれた石灰分は洗い流されることなく年輪のように積み重なっていきます。
いろいろな形を見せる鍾乳石、洞窟の中でぜひ探してみてください。

新たな水中鍾乳洞の発見

稲積水中鍾乳洞は今なお研究が進められています。
2014年2月に行った潜水調査では、水中鍾乳洞全体の測量と、本洞最奥部の調査結果が報告され、新たに800メートルもの鍾乳洞が見つかり全長は約1kmになりました。現時点で日本最長の水中鍾乳洞です。

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写真で見る 調査の様子

迷路のように長く続く水中鍾乳洞を潜って調査するため、ウエットスーツに水中ボンベ、ライトに撮影用カメラと、体一つに全てを持ち、ダイバーは光の届かない水の中を泳いでいかなければいけません。潜水時間も長く、特徴になる目印もありませんので、ダイバーたちは命綱をはりながら道すじを作り、地図のない洞窟を進んでいきます。調査にあたってダイバーたちが張ったロープは約3,000m。そしてまだ、調査は続いているのです。

※この写真は調査の様子です。一般のお客様は潜水等はできませんのでご注意ください。

動画で見る 調査の様子

※この写真は調査の様子です。一般のお客様は潜水等はできませんのでご注意ください。

   

調査報告書

調査期間 平成26年2月24日~2月27日まで
調査目的 水中鍾乳洞全体の測量と本洞最奥部の調査
調査方法 従来の開放式スクーバシステムに比べて廃棄の泡を極力抑えることができる閉鎖式循環呼吸器(リブリーザー)を使用。
測量は水中で電波を発し、その電波が反射する時間を利用して正確な距離を測定することが可能な携帯式の水中ソナーを使用。
調査結果 既に設置されている全長500mのラインエンドから更に200m以上洞窟が続いていることが確認できた。 更に示現の淵から約150mほど進んだところに支洞を発見。今回は支洞の入り口から約100m進んだところで引き返したが、支洞はさらに奥まで続いていた。正確な測量は次回の調査に実施する予定だが、現時点では確認できた連続した水没部分の全長は約800m以上あると思われる。 以上のことから、水中洞窟としては、秋吉台のサンプ部分320m、沖縄県久米島のガーラガマ(通称ヒデンチガマ)450m、沖縄本島のヒロベガマ総延長620mを抜いて、稲積水中鍾乳洞が現時点で日本最長と思われる

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鍾乳洞資料館

鍾乳洞資料館

鍾乳洞資料館では、パネル展示や動画の公開、報告書など、稲積水中鍾乳洞に関する詳しい解説を見ることができます。
お子様向けのわかりやすい展示から、詳しい研究結果等まで、多くの方に楽しんでいただけるよう工夫した施設です。
ぜひ一度足をお運びください。